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【失敗編 総まとめ】農業参入「失敗の本質」-なぜ同じ失敗を繰り返してしまうのか

1.失敗の本質は「ズレ」である

農業への参入を検討する企業は年々増えています。

市場が拡大し、供給不足が続く中で、「今がチャンスではないか」と考える企業も少なくありません。

しかし実際には、多くの企業が農業から撤退しています。

これは中小企業だけではありません。

十分な資金力や人材を持つ大企業であっても、農業事業を継続できずに撤退するケースが数多く存在します。

では、その原因は何でしょうか。

「農業は難しいから」

「経験が足りなかったから」

「担当者の能力が不足していたから」

そう考えられることもあります。

しかし実際には、それだけでは説明できません。

業種も企業規模も異なる企業が、驚くほど似た形で失敗しているからです。

つまり、個別の能力ではなく、共通する構造が存在しているということです。

農業参入の失敗は、偶然起きているものではありません。

失敗する企業には共通する判断のズレがあります。

私たちは、そのズレを大きく3つに整理しています。

・前提のズレ
・順番のズレ
・再現性のズレ

前提のズレとは、「始められる理由」を「成立する理由」と勘違いしてしまうことです。

順番のズレとは、本来確認すべき収益構造より先に、作物や規模、販路などを決めてしまうことです。

再現性のズレとは、一度成功したことを、組織として継続できる状態だと考えてしまうことです。

これらは一つひとつを見ると、小さな判断の違いに見えるかもしれません。

しかし、このズレを修正しないまま事業を進めると、設備投資や採用、販路開拓など、その後の判断もすべてズレていきます。

農業参入で重要なのは、「何を作るか」ではありません。

どこで判断がズレるのか。

まずはそこを理解することが、失敗を避ける第一歩になります。

2.【前提のズレ】始められる理由と成立する理由は違う

農業参入で最初に起きやすいのが、「前提のズレ」です。

企業が農業を始めようと考えるきっかけはさまざまです。

例えば、

・使える土地がある
・補助金を活用できる
・既存事業との相乗効果が期待できる
・地域から農業参入を求められている

こうした理由から、農業を検討するケースは少なくありません。

もちろん、これらは決して悪いことではありません。

土地があることも、補助金を活用できることも、企業として大きな強みになります。

しかし、ここで一つ注意しなければならないことがあります。

それは、

「始められる理由」と「事業として成立する理由」は違う

ということです。

例えば、補助金があるから農業を始める。

この考え方自体は間違いではありません。

しかし、補助金がなくなった瞬間に利益が出なくなるのであれば、その事業は自立しているとは言えません。

補助金は、あくまでも事業を後押しするための手段です。

事業そのものを成立させる理由ではありません。

土地についても同じです。

土地を持っているから農業ができることと、その土地で利益を出し続けられることは別の話です。

立地や面積、気候条件、栽培方式によって、事業性は大きく変わります。

土地があるという事実だけでは、農業が成立するかどうかは判断できません。

企業の場合、本業で成功しているほど、この前提のズレが起きやすくなります。

販売力がある。

資金力がある。

人材もいる。

だから農業でも何とかなる。

そう考えてしまうことがあります。

しかし、農業は既存事業とは前提が大きく異なります。

天候によって収量は変わります。

品質も毎回同じにはなりません。

計画どおりに商品が完成するとは限らない事業です。

だからこそ、最初に確認すべきなのは、

「始められるかどうか」

ではなく、

「継続して利益を生み出せる事業なのか」

ということです。

ここを取り違えると、その後の判断もすべてズレていきます。

農業参入では、

始められる理由ではなく、成立する理由から考える。

これが最初の重要なポイントです。

3.【順番のズレ】順番を間違えると事業は崩れる

二つ目のズレは、「順番」です。

農業参入を検討するとき、多くの企業は次のようなことから考え始めます。

・何を作るか
・どれくらいの面積で始めるか
・どこへ販売するか
・どの設備を導入するか

どれも必要な検討事項です。

しかし、本来はもっと先に考えなければならないことがあります。

それは、

事業として成立する構造になっているか

ということです。

まず利益が出る仕組みを確認する。

次に、その利益を支える品質と収量を安定して実現できるかを確認する。

そして最後に、規模を拡大する。

本来の順番は、この流れです。

ところが、この順番が逆になってしまうケースが少なくありません。

例えば、

「大きく始めれば利益が出るだろう」

と考え、最初から面積を広げる企業があります。

しかし、安定して利益が出る仕組みができていない状態で規模を拡大すると、利益ではなく赤字も同時に大きくなります。

また、

「販売先はあるから大丈夫」

という考え方もよく見られます。

確かに販路は重要です。

しかし、安定して商品を供給できなければ、販路は機能しません。

品質が揃わない。

必要な量を出荷できない。

これでは販売先との信頼関係も維持できません。

露地栽培も同様です。

初期投資が少なく始めやすいという理由だけで選ばれることがあります。

しかし、露地栽培は天候や病害虫の影響を強く受けます。

さらに、同じ地域では同じ時期に同じ作物が市場へ出荷されやすく、価格競争にも巻き込まれます。

「始めやすい」

ことと、

「利益を出し続けられる」

ことは違います。

つまり、順番のズレとは、

成立していない状態を前提に、次の判断を積み重ねてしまうこと

です。

農業参入では、

何を作るかよりも、

どうすれば利益を出し続けられるのか。

ここから考える必要があります。

4.【再現性のズレ】一度できることと続けられることは違う

三つ目のズレは、「再現性」です。

農業参入では、経験豊富な栽培責任者を採用し、立ち上げが順調に進むことがあります。

品質の高い野菜が収穫できる。

予定どおり出荷できる。

こうした状態になると、

「もう農業事業は軌道に乗った」

と考えてしまうことがあります。

しかし、

一度できたことと、続けられることは別です。

農業は、一度収穫できれば終わる事業ではありません。

毎年。

毎作。

必要な品質と収量を維持し続けることが求められます。

ところが、実際には現場が一人の経験や勘に依存しているケースが少なくありません。

温度管理。

潅水。

病害虫への対応。

収穫のタイミング。

こうした判断が、その人だけの経験になっている状態です。

この状態では、その担当者が退職したり異動したりすると、同じ品質や収量を維持できなくなります。

品質がばらつく。

収量が安定しない。

結果として売上も不安定になります。

ここで問題なのは、人が辞めたことではありません。

技術や判断基準が組織に残っていないことです。

企業として農業を行う以上、

誰が担当しても一定の結果を出せる状態

をつくらなければなりません。

栽培データを蓄積する。

作業を標準化する。

判断基準を共有する。

こうした仕組みがあって初めて、農業は組織として継続できる事業になります。

再現性とは、単なる栽培技術ではありません。

企業が農業を事業として続けるための経営基盤そのものなのです。

5.6つの失敗パターンはズレの結果である

ここまで見てきたように、農業参入で起きる失敗の本質は、

・前提のズレ
・順番のズレ
・再現性のズレ

この3つにあります。

では、実際の現場では、このズレはどのような形で現れるのでしょうか。

私たちは、多くの企業の農業参入を見てきましたが、その失敗の多くは次の6つのパターンに整理できます。

一見すると、それぞれ別の問題に見えるかもしれません。

しかし、本質は違います。

例えば、「規模の失敗」は面積の問題ではありません。

安定して利益が出る仕組みを作る前に規模を拡大したことが原因です。

「販路の失敗」も、販売先そのものが悪いわけではありません。
そもそも、独自で販路開拓することが難しいとされているのが農業。
販路開拓できたとしても
安定して供給できない状態だと、出荷先の信頼を得ることはできません。
また、積極的に販路開拓することもできないのです。

「補助金の失敗」も、補助金を使ったことが問題なのではありません。
補助金がなくなれば成立しない事業を設計したことが問題なのです。

つまり、表面的には違う失敗でも、その原因はすべて同じところにあります。

前提を間違えた。

順番を間違えた。

再現できない仕組みだった。

このどれか、あるいは複数が重なった結果として、失敗が形になって現れています。

そのため、表面的な対策だけでは問題は解決しません。

例えば、

「規模を小さくすれば成功する」

「販路を変えればうまくいく」

「設備を新しくすれば改善する」

こうした対応だけでは、本当の原因は残ったままです。

ズレが修正されない限り、問題は形を変えて再び現れます。

だからこそ、失敗事例を一つひとつ覚えることよりも、

どのズレから生まれた失敗なのか

を理解することが重要です。

6.なぜ同じ失敗が繰り返されるのか

ここまで整理すると、多くの方がこう思われるかもしれません。

「これだけ整理されているなら、なぜ同じ失敗が繰り返されるのだろう。」

実際、農業参入で起きる失敗の多くは、珍しいものではありません。

それにもかかわらず、毎年同じような失敗が繰り返されています。

その理由は、とてもシンプルです。

農業を「構造」ではなく、「条件」で見てしまうからです。

企業が農業を検討するとき、多くの場合は、

・何を作るか
・どこで作るか
・どれくらい投資するか
・どこへ販売するか

といった具体的な条件から検討が始まります。

もちろん、これらは必要な検討項目です。

しかし、本来はその前に確認すべきことがあります。

それが、

「この事業は本当に成立する構造になっているのか」

という視点です。

この構造を確認しないまま、

「できそうだから」

「土地があるから」

「補助金があるから」

という理由で進めると、判断の土台そのものがズレてしまいます。

さらに、企業にはもう一つの落とし穴があります。

それが、本業での成功体験です。

販売力がある。

組織力がある。

資金もある。

だから農業でも同じように成功できる。

そう考えてしまう企業は少なくありません。

しかし、農業は製造業でも、小売業でもありません。

計画どおりに商品が完成するとは限らず、自然条件の影響を大きく受ける事業です。

本業での強みは大きな武器になります。

一方で、その成功体験をそのまま農業へ当てはめると、判断を誤ることがあります。

もう一つ見落とされやすいのが、農業の難易度です。

農業は、一見すると始めやすく見えます。

土地がある。

設備を導入する。

人を採用する。

これだけで事業が始められるように感じます。

しかし、本当に難しいのは、

安定して作り続けること

です。

この難しさを過小評価すると、十分な検証を行わないまま参入し、問題が起きてから修正しようとすることになります。

そして最後に、一度始めた事業は簡単には止められません。

設備投資を行い、人を採用し、地域との約束もある。

そうなると、

「もう少し続ければ改善するかもしれない」

という判断になりやすくなります。

結果として、ズレを修正しないまま投資を続け、損失だけが大きくなっていきます。

つまり、同じ失敗が繰り返されるのは、

失敗事例を知らないからではありません。

事業を構造ではなく、条件だけで判断してしまうから

なのです。

7.失敗回避と事業成立は別である

ここまで、農業参入で失敗する企業に共通する構造を整理してきました。

・前提を間違えないこと。

・順番を間違えないこと。

・再現できる仕組みをつくること。

これらを理解することで、多くの失敗は避けられるようになります。

しかし、ここで一つ重要なことがあります。

それは、

失敗しないことと、事業が成立することは同じではない

ということです。

例えば、

補助金に依存していない。

規模も適切である。

販路もある。

属人化も防げている。

ここまでできていても、利益が出るとは限りません。

なぜなら、

事業として成立するためには、

収益構造そのもの

を設計しなければならないからです。

例えば、

どれくらいの投資が必要なのか。

どの程度の収量が必要なのか。

どのくらいの販売単価を確保する必要があるのか。

どこが損益分岐点になるのか。

どの段階で規模を拡大すべきなのか。

これらが整理されて初めて、

「農業事業として成立する条件」

が見えてきます。

つまり、

失敗を避けることは、スタートラインに立つための条件です。

そこから先に、

利益を出し続ける仕組みを設計する必要があります。

市場が伸びていることも、

失敗する理由を理解することも、

それだけでは、農業参入を判断することはできません。

本当に重要なのは、

「どの条件が揃えば、農業は事業として成立するのか」

を理解することです。

次の記事では、この「成立する構造」について整理していきます。

市場が伸びている理由。

失敗する理由。

そして、成立する条件。

この3つがつながって初めて、自社にとって農業参入が本当に事業として成立するのかを判断できるようになります。

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テーマ別に学ぶ

【失敗①】なぜ大企業でも農業で失敗するのか|規模では越えられない農業参入の現実

【失敗②】農業参入でよくある6つの失敗パターン|ほとんどはこの型に収まる

【失敗③】農業参入がうまくいかない本当の理由―なぜ同じ失敗を繰り返してしまうのか


【市場編】

【市場編 総まとめ】農業市場は本当にチャンスなのか

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