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【成立編】なぜ「トマト」と「いちご」になるのか―構造から考える農業参入の最適解

1.農業参入の作物は「好き嫌い」で選ばない

農業参入では、
「何を作るのか」
という作物選びが非常に重要です。

ただし、
作りたい作物や好きな作物を選べばいいという話ではありません。

企業が農業に参入する場合に見るべきなのは、
その作物で事業として成立する構造を作れるかどうか
です。

前回整理した通り、
農業の売上構造はシンプルです。

売上 = kg単価 × 収量

つまり、作物を選ぶときに見るべきなのは、
単に「高く売れそうか」ではありません。


・kg単価は成立するのか
・必要な収量を出せるのか
・その状態を継続して再現できるのか

この構造を前提にすると、
農業参入で選べる作物はかなり絞られてきます。

作物は「何を作りたいか」ではなく、「どの作物なら収益構造を成立させられるか」で選ぶことが重要です。

2.根菜・葉物・果菜では「成立する構造」が違う

ここから、作物を事業構造の違いから見ていきます。

青果市場の作物は、
大きく「根菜」「葉物」「果菜」に分けることができます。

重要なのは、
それぞれで事業として成立する構造が違うということです。

まず、じゃがいもやにんじんなどの根菜です。

根菜は露地栽培が中心で、
広い面積と機械化によって生産性を高める構造になっています。

根菜
・露地栽培が中心
・広い面積が必要になりやすい
・機械化による効率化が重要
・単価は上がりにくい
・スケールで成立させる構造

そのため、後発の企業が小さな面積から参入して差別化するには、
難易度が高くなりやすい領域です。

次に葉物です。

葉物は露地栽培が中心ですが、
一部では施設栽培や人工光型の植物工場でも生産されています。

葉物
・露地栽培が中心
・一部では施設栽培も可能
・商品として差が出にくい
・人工光型では電気代などのコストが大きい
・資本力が求められやすい

施設を使えば安定生産はしやすくなりますが、
人工光型では生産量に応じて電気代などのコストも積み上がります。

一方で、トマトやいちごなどの果菜は、
施設栽培との相性が高い作物です。

果菜
・施設栽培との相性が高い
・栽培環境をコントロールしやすい
・単価と収量を設計できる余地がある
・品質や販売方法で差を作りやすい
同じ農業でも、作物によって「利益を作る構造」は大きく異なります。

3.なぜ企業の農業参入では「施設栽培」が重要なのか

作物の違いと同時に考えなければならないのが、
「どのように作るのか」です。

企業が農業を事業として成立させるためには、
再現性が必要になります。

露地栽培は、
天候の影響を受けることを前提に成り立っています。

経験のある農家であれば、
天候や生育状況を見ながら、
長年培った経験と技術で対応していきます。

しかし、農業未経験の企業が同じ前提で参入すると、
事業として安定させる難易度は高くなります。

露地栽培
天候の影響を受ける

経験と技術による対応が必要

だからこそ、
企業の農業参入では、
環境をできるだけコントロールできる施設栽培が重要になります。

施設栽培
温度・水・肥料などを管理

栽培環境をコントロール

再現性を作りやすくする

ただし、
施設を導入すれば、それだけで事業が成立するわけではありません。

同じ施設、
同じ作物でも、
管理の仕方によって品質と収量は大きく変わります。

単価と収量を成立させるのは、設備だけではなく「栽培技術と設計」です。

施設は再現性を高めるための手段であり、
最終的な結果を決めるのは、
その環境をどう使いこなすかです。

4. なぜ農業参入では「作物を絞る」必要があるのか

もう一つ重要なのが、
扱う作物を増やしすぎないことです。

一見すると、
複数の作物を作った方がリスクを分散できるように見えます。

しかし、農業未経験の企業にとっては、
多品目化によって栽培技術まで分散する可能性があります。

多品目に分散する

栽培技術も分散する

品質が安定しない
収量が出ない
再現性が作れない

単価も収量も成立しない

農業では、
作物によって必要な栽培技術や管理方法が異なります。

だからこそ、
農業未経験の企業ほど、
作物を絞って技術を集中させることが重要です。

ここまでを整理すると、
企業が作物を選ぶ際の条件は大きく3つです。

① 単価と収量が成立すること
② 施設で再現できること
③ 栽培技術を集中できること

この3つの条件で作物を見ると、
選択肢はかなり限られてきます。

5.なぜトマトといちごに絞られるのか

では、この条件で作物を見た場合、
どのような作物が候補になるのでしょうか。

その中で、
企業の農業参入で選択肢になりやすいのが、
トマトといちごです。

まずトマトです。

トマトは、
単価と収量のバランスを取りやすく、
単位面積あたりの売上を設計しやすい作物です。

トマト
・単価と収量のバランスを取りやすい
・施設栽培による環境管理がしやすい
・売上構造そのものを設計しやすい

一方、いちごは、
農産物としての単価が高いことに加えて、
販売方法そのものを広げられる特徴があります。

(図:作物別kg単価と反収いちご6)

代表的なのが、
いちご狩りです。

収穫したいちごを商品として販売するだけでなく、
農園での体験そのものを商品にすることができます。

いちご
・比較的高い単価を作りやすい
・施設栽培との相性が高い
・いちご狩りなど体験として販売できる
・生産だけでなく販売方法まで設計できる

つまり、トマトといちごは、
単に人気があるから選ばれるわけではありません。

単価・収量・再現性・販売設計という条件から見ると、収益モデルを作りやすい領域にあるからです。

こうした条件を構造で見ていくと、
企業の農業参入では、
トマトといちごに選択肢が収束しやすくなります。

6.トマト・いちごを選べば成立するわけではない

ただし、
ここで注意しなければならないことがあります。

トマトを選べば成立する。
いちごを選べば成立する。
というわけではありません。

作物を選んだ後にも、
事業として成立させるための条件があります。

・必要な品質を安定して作れるか
・必要な収量を出せるか
・その商品を売上につなげられるか
・同じ結果を継続して再現できるか

どれか一つだけでは成立しません。

例えば、
高品質なトマトを作れても、
必要な収量が出なければ売上は作れません。

また、
十分ないちごを収穫できても、
販売や集客の設計ができていなければ、
その収量を売上に変えることはできません。

作物選定は「答え」ではなく、事業として成立させるための入口です。

最終的に重要なのは、
選んだ作物で単価と収量を成立させ、
それを継続して再現できる状態を作ることです。

7. 農業参入における作物選定で重要な視点

ここまでの内容を整理すると、
農業参入で作物を選ぶときの判断軸は、
好き嫌いやイメージではありません。

まず見るべきなのは、
その作物で収益構造を成立させられるかどうかです。


売上は「kg単価 × 収量」で見る

施設で再現できるかを見る

栽培技術を集中できるかを見る

販売まで設計できるかを見る

この条件から作物を見ていくと、
選択肢は自然と絞られます。

その中でトマトといちごは、
単価・収量・再現性・販売設計の面から、収益モデルを作りやすい作物
です。

「何を作りたいか」ではなく、「どの作物なら事業として成立する構造を作れるか」で判断することが重要です。

ただし、
作物を決めただけでは、
農業参入の判断材料がすべて揃ったわけではありません。

どの条件であれば成立するのか。
どこまでなら再現できるのか。

ここまで具体的に設計して、
初めて農業参入を事業として判断できるようになります。

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【成立編 総まとめ】農業参入はどうすれば成立するのか


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