いちご狩りは集客力が高く人気ですが、参入初期に“いちご狩りから始める”のは難易度が高いのが実情です。主な理由は次の3点です。
1)駐車場の壁(法規・用地・近隣対応)
- 農地を借りる調整に加え、駐車場利用には農地転用(地主の同意+行政手続き)が必要でハードルが高い。
- 舗装・排水・導線・照明などの周辺設備整備、繁忙期の渋滞や騒音に対する近隣対策も不可欠。
- 結果として「圃場+駐車場」の二重整備が初期コスト・スケジュール負担を増大させる。
2)トマトに比べてビジネスモデルが複雑(栽培+観光運営)
- トマトは出荷中心(B2B)で比較的シンプル。
- いちご狩りは予約管理・接客・安全衛生・動線設計・決済・口コミ対応(B2C)まで業務が多岐にわたる。
- 農業+観光サービス業を同時立ち上げする負荷が大きく、初期トラブルが栽培にも運営にも波及しやすい。
3)開催期間が短く、人員配置が困難
- いちご狩りの開催はおおよそ12月~5月の約6か月に限定。
- 来客が週末・連休に集中し、閑散期は人員が余りやすく雇用計画が立てにくい。
- 接客に慣れた人材の季節確保・教育コストが重くなりやすい。
これらの理由から、参入初期にいちご狩りを選ぶのは非常に高いハードルがあります。検討段階まで進んだものの、条件面から見送りとなったケースもあります。JAMPSのご支援先でも参入時にいちご狩りから始めたのは1社のみで、そのケースは「すでに店舗に併設された広大な駐車場を利用できた」という特別な条件がありました。多くの企業はまずトマトなどの出荷型作物で農業をスタートし、周辺農業者や行政との信頼関係を築いた上で、段階的にいちご狩りに展開する方法を取っています。こうしたステップを踏むことで、いちご狩り事業の成功可能性を高めることができます。