Report
製造業・建設業から農業へ?異業種が挑戦する農業参入とは

1.はじめに:なぜ今、中小企業が農業に注目するのか

地方創生と次世代への事業承継

日本の多くの中小企業が直面している課題のひとつが、「事業の次の柱づくり」と「世代交代への備え」です。特に地方都市では、人口減少や高齢化に伴い、これまでの業態だけでは持続的な成長が難しいと感じている経営者も少なくありません。そうしたなかで注目されているのが“農業”です。

農業は一見、異業種に感じられるかもしれませんが、地域との関係性が深く、本業との相乗効果を生み出す可能性があります。たとえば、建設資材業や小売業、食品業など、地域をフィールドに事業展開してきた企業にとって、地元の人材や土地資源を活用できる農業は「第二の本業」として育てやすいのです。さらに、自社スタッフや次世代にとっても、新しい挑戦の場となり、事業承継の選択肢が広がる点も見逃せません。

 

社会課題と企業の役割

近年、企業活動には「経済性」だけでなく「社会性」が求められるようになっています。SDGsやESG経営の広がりもあり、単に利益を追求するだけでなく、社会課題の解決に貢献できるかどうかが、企業の評価軸となってきました。

その中で農業は、「食の安定供給」「地域雇用の創出」「遊休農地の活用」といった社会課題と直結する分野でありながら、適切な栽培モデルと販売戦略があれば、持続的に収益をあげることも可能な分野です。つまり、中小企業が農業に参入することは、「地域貢献」と「収益事業」の両立が期待できる、非常に実効性の高い戦略なのです。

今こそ、地域に根ざし、社会に応える企業だからこそできる、新たな挑戦としての“農業”が注目されています。

2.異業種から農業に参入するという選択肢

2.異業種から農業に参入するという選択肢

製造業・建設業・造船業など「現場力」が活かせる職種とは

農業に必要とされる“現場対応力”や“モノづくりの感覚”は、まさに製造業や建設業、造船業が長年培ってきた強みと重なります。現場での段取り、設備メンテナンス、作業工程の最適化といったスキルは、農業の中でも特に施設園芸分野で強く求められます。実際、ハウスの組立・施工や、温湿度の管理機器の導入・調整など、設備面での知見が活きる場面は多く、異業種であっても農業の“生産現場”にスムーズに適応できるのです。

飲食・小売・リフォーム業が強みを発揮する“6次産業化”の可能性

飲食業や食品小売業、リフォーム業など、エンドユーザーと日常的に接する業種には、“売る力”と“見せる力”があります。農業においても、ただ作るだけではなく、ブランディングや販路設計、直販・加工品販売などの6次産業化が重要視されています。これらの業種の経験がある企業は、農産物を“商品”として捉え、ストーリーやパッケージを含めた価値提案が得意なため、販売面での優位性を持っています。

ガソリンスタンドやガーデンセンターも?土地と接点を活かした展開

一見、農業とは縁遠そうに見えるガソリンスタンドやガーデンセンターも、実は農業と相性の良い業態です。理由は“土地”と“地域との接点”をすでに持っていること。遊休地の活用や、地域住民へのリーチ、既存拠点の集客力を生かすことで、農業施設の立地としても機能し、販売や体験型農園との連携も展開可能です。都市近郊での小規模多収型の農業モデルを検討するには、こうした業態のアセットが有効です。

3.農業は儲からないは本当か?失敗事例と成功事例から学ぶ

撤退した企業参入に共通する「栽培技術の見極め」

農業参入に失敗した企業には、「栽培技術が伴わなかった」点が共通しています。
特に施設園芸においては、環境制御や日々の作業精度が収穫量と品質に直結するため、単に設備を導入するだけでは不十分です。現場と経営が一体となって取り組む体制が整っていないと、事業としての継続は難しくなります。
「農業売上=品質×収量」です。
この「品質」と「収量」を決めるは、ほかでなく「栽培技術」でしかありません。
まずは農業参入前に、「栽培技術」がどんなものなのか、実現可能なのかをじっくり見極める必要があります。

成功している中小企業の共通点とは?

一方、農業で収益を上げている中小企業には、「栽培の安定」と「販路開拓」といった共通点があります。
・慎重に選んだ実現可能な栽培技術を見極めた上で、農業に参入している
・選んだ栽培技術を信じて現場で実践できる「栽培責任者の育成」
・経営陣が上記を理解したうえで農業事業部をサポートする
体制が必要です。
例えば、JAMPSの支援先では、化学農薬を使用せず大玉トマト38t/反・中玉トマト27t/反といったより高い反収を実現しながら、「販路開拓」を並行して行うことで収益化に成功しています。

「栽培技術」をまずはしっかりと見極めることからはじめる

確かに、従来の露地栽培や慣行農法では、天候や市場価格の影響を受けやすく、未経験で農業参入しても利益を出すのが難しいと言わざるを得ないといった状況でした。
しかし、近年はICT・環境制御・高単価作物の選定などにより、未経験でも栽培はうまくいくケースが出てきました。
さらに一歩進んで、まずが「目標収量」および「目標単価」が実現できる「栽培技術なのかどうか」を見極めましょう。
農業を1つのビジネスモデルとして捉え、本気で将来の事業の柱に育てるといった想いがあれば、他社の追随を許さない事業へと変貌を遂げることでしょう。
「農業は儲からない」といったイメージがあるからこそ、成功すれば企業ブランド向上にもつながるのです。

4.広大な農地がなくても参入できる!最新の施設園芸モデルとは

施設園芸とは?中小企業でも始められる理由

施設園芸とは、ビニールハウスやガラス温室などの人工構造物の中で作物を育てる農業の形態です。日射や温度、湿度、二酸化炭素量、養液などを制御することで、天候に左右されず安定的な生産が可能となります。これにより、限られた敷地面積でも高収量を実現できるため、数haといった広大な農地を必要としないのが最大の特長です。たとえば、わずか20aのハウスでも、収益性の高い大玉トマトや中玉トマトを栽培し、1棟あたりで事業性の高いモデルを構築できます。

最小単位で始める“スモールスタートモデル”

JAMPSが支援する施設園芸モデルでは、最初は20a1棟からでもスタート可能な設計になっています。初期投資を抑えつつ、収穫量・品質・人材オペレーションのノウハウを蓄積し、段階的に規模を拡大していく戦略です。また、ハウス建設、環境制御システムの導入、栽培スケジュール、販売設計までワンストップで支援されるため、農業未経験の中小企業でもリスクを最小限に抑えて挑戦できます。

都市近郊でも実現できる!地の利を活かした展開

施設園芸は、水田や広大な畑がなくても、平坦な遊休地さえあれば都市近郊でも成立します。むしろ、消費地の近くに拠点を持つことで、物流コストを抑えたり、飲食店やスーパーとの直接取引がしやすくなったりといった利点があります。さらに、いちご狩りやトマト収穫体験など観光農園との連携にも発展しやすく、販売と集客を兼ねた新しいビジネスモデルも構築可能です。

まとめ:限られた土地でも実現できる、高収益農業の選択肢

「農地がないから農業は無理」と考える時代は終わりつつあります。施設園芸という選択肢により、限られたスペースでも高収益な農業が実現可能です。事業としての再現性も高く、農地の確保に悩む中小企業にとって、最も現実的で挑戦しやすい農業モデルといえるでしょう。

5.JAMPSが支援する中小企業の農業参入プロセス

8つのステップで着実に前進

農業参入は、1つの判断だけで完結するものではなく、いくつかの段階を経ながら進めていくプロセス型の取り組みです。JAMPSでは、農業未経験の中小企業でも迷わず進められるよう、「目的の明確化」から「販売開始」までの8ステップに沿って支援を行います。

STEP 1:農業参入の目的を明確にする

耕作放棄地の活用、地域貢献、社員の雇用拡大、収益の柱づくりなど、農業に参入する目的は企業ごとに異なります。JAMPSでは、外部環境分析や自社資源の棚卸しを通じて、ブレない目的設定を支援します。

STEP 2:栽培品目と栽培技術を選定

農業の成否を左右する大きなポイントが「品目選定」と「技術レベル」です。JAMPSでは、地域特性や販売戦略も踏まえた上で、反収の見込める高単価作物や、それに適した栽培手法を提案しています。

STEP 3:農地の確保

参入意思が固まったら、農地の選定・確保に進みます。地元自治体や農業委員会との調整、農地法に基づく許認可取得など、JAMPSが手続き面も一貫してサポートします。

STEP 4:事業計画の策定

投資計画・収支計画・人員配置計画を含む総合的な事業設計を行います。補助金活用や金融機関への説明用資料作成もJAMPSがサポートします。

STEP 5:栽培研修

栽培品目ごとに作業工程や注意点が異なるため、JAMPSでは実際の圃場や研修施設での実地研修を実施します。作業の基本から環境制御の操作方法、品質管理や収穫のコツまで、現場で役立つ知識を実践的に学べます。社員教育や新規雇用スタッフの導入研修にも対応しています。

STEP 6:定植準備

ハウス建設や設備搬入、苗や資材の発注、肥料・農薬・潅水設備の準備を進め、定植に向けた万全の体制を整えます。同時に、商品ブランディングや販売チャネルの整備も進行。収穫後に即売上に結びつけるための準備フェーズです。

STEP 7:栽培開始

苗の定植を行い、いよいよ栽培スタート。環境制御の微調整や作業記録の管理、病害虫の予防など、日々の管理業務が本格化します。JAMPSでは、スタート直後のトラブル対応やリモート相談にも対応し、安定した運営をバックアップします。

STEP 8:販売開始

収穫物の品質を最大限に活かすために、販路設計と営業支援を行います。取引先開拓、価格設定、納品体制の構築、EC展開など、実情に応じた販路戦略を提案。初期はJAMPSのネットワークを活用し、販路ゼロからの立ち上げも支援します。

6.なぜ今がチャンスなのか?中小企業こそ成功しやすい理由

大企業の撤退≒中小企業の好機

大規模投資を伴う農業参入で成果を出せなかった企業が市場から撤退する中、小回りの利く中小企業にとっては新たな商機が生まれています。過去に参入した大企業は、「本業とのシナジー不足」や「現場との乖離」により継続が困難となりました。逆に言えば、現場との距離が近く、実行と判断を素早く回せる中小企業には向いている時代です。

地域に根ざした企業ならではの優位性

地域ネットワークを持つ企業にとって、農業参入は「販売先との信頼関係」や「地元雇用の確保」「遊休地の活用」など、既存の地域資源を活かせるチャンスでもあります。地元スーパーや飲食店との連携、農福連携による人材活用など、地域密着型の経営モデルだからこそ展開しやすい農業スタイルがあります。

トマト38t/反・いちご観光農園など成功事例が続出

JAMPSが支援する中小企業の中には、大玉トマトで38t/反を実現した事例や、いちご狩り観光農園として人口1.2万人の町で半年間で10,000人を集客している事例も増えています。こうしたモデルは汎用性が高く、1社1棟からでも始められることが強みです。

今こそ“地域に根ざした第2の柱”を

事業承継・人材確保・地方創生といったテーマに直面する今だからこそ、農業は本業に続く第2の柱となり得ます。収益性・社会性・持続可能性を兼ね備えた事業として、中小企業の未来戦略にふさわしい選択肢といえるでしょう。

7.よくある疑問と不安に答えます

Q:農業未経験でも本当にできるの?

はい、可能です。JAMPSでは、農業の知識ゼロから始めた企業への支援実績が多数あります。実地研修・マニュアル・月1~2回のリアルによる栽培会議・毎日のLINE相談など、未経験者でも安心して取り組める環境を整えています。

Q:農地はどうやって確保するの?

原則として「借りる」ことで農業参入を実現するケースが多く、JAMPSが地元自治体や農業委員会との調整を代行します。法人の場合の農地取得には制限があります。JAMPSのご支援先のほとんどは「借りる」ことによって農業参入を行っています。

Q:販路がないと売れないのでは?

販路は参入時点でなくても問題ありません。JAMPSでは、地域スーパーや飲食店、ネットショップ、直売所などの販路開拓支援を行い、0からの販売体制構築をサポートしています。直近の事例では、定植から収穫開始するわずか2か月で30店舗の販路開拓ができました。

Q:人材はどう確保するの?

採用に困るのではないかと不安がる方も多いのですが、採用に困ったことは一度もありません。地域の主婦層の方がパート雇用として多く応募してくれます。パートさん募集を行えば少なくても30名くらいの応募はあります。最も多かったご支援先では100名の応募が来てしまい途中で募集を止めたほどです。また今後は、作業の細分化などを進め、農福連携による就労支援など、地域に根ざした人材活用を目指しています。また、作業を効率化するオペレーション構築も含めて、少人数でも回る体制を支援します。

Q:収益化までにどれくらい時間がかかる?

立ち上げ3年目で収穫・販売による収益化が可能です。投資回収の目安は、7~10年です。

★よくある質問についてもっと見る

8.まとめ:次の世代に渡せる新しい事業を今こそ考える

<h5>“地域に根ざす農業”という選択</h5>
<p>人口減少、後継者不足、地域経済の衰退。こうした課題に対して、農業は地域と企業の未来を同時に支える新たな解決策になり得ます。中小企業がもつ地域密着性、柔軟な経営判断、人とのつながりを活かせば、“小さく始めて大きな成果”を得ることが可能です。</p>

<h5>「収益性×社会性×継続性」が揃う事業</h5>
<p>農業は、単に儲かるビジネスではなく、地域雇用・環境保全・健康志向といった現代の社会課題と調和した、持続可能な事業モデルでもあります。これからの時代、「収益を生みながら社会に貢献する」ことが、中小企業に求められる価値になります。</p>

<h5>会社と地域の未来に“新しい柱”を</h5>
<p>農業を通じて、社員が誇りを持てる仕事を創出し、地域に新たな賑わいをもたらす。中小企業だからこそ実現できる農業のかたちがあります。今こそ、JAMPSと共に“次世代に引き継げる新しい柱”づくりに踏み出してみませんか?</p>

contactお問い合わせ
ご不明点‧ご相談などございましたら、
お問い合わせフォームまたはお電話より
お気軽にお問い合わせください。
03-6841-4351(代表)
【受付時間】平日10:00~19:00(土日祝を除く)