露地栽培は投資コストも低く一見シンプルに見えますが、プロの農家でも毎年安定させるのが難しいのが現実です。その主な理由は次の3点です。
1)天候への依存度が高い
- 台風・長雨・干ばつ・高温/低温など、気象リスクの影響を大きく受けます。
- 収量は20〜40%変動することもあり、品質ランクの低下によって単価が下がるケースも少なくありません。
- 病害虫の発生が想定外の時期に起きると、防除が間に合わず一気に収量が落ちることもあります。
2)価格とコストの不安定さ
- 出荷が集中すると市場価格が急落し、規格外品が増えると平均単価も低下します。
- 契約販売が整っていないと、市況の影響を強く受け、安定収益を確保するのが困難です。
- 肥料・資材・燃料・物流費の価格変動や、収穫期に集中する人手確保のコスト上昇など、経営計画が大きく崩れるリスクがあります。
- 固定費(農地賃借料・機械償却など)が一定して発生するため、収量が落ちるとすぐに赤字に転じやすい構造です。
3)農地条件のハードル
- 単なる広さではなく、効率的に管理できる地続きの複数ヘクタール規模の農地を確保できるかが大きな課題です。
- 肥沃な土壌を整えるには時間と経験が不可欠で、未経験の企業が短期間で成果を出すのは困難です。
- 日照・土壌・水質・排水条件など、良好な環境の農地を借りられるとは限らず、成果に直結するリスクがあります。
まとめ
企業が経営の安定を求めるのは当然のことです。しかし、露地栽培はプロの農家であっても毎年安定させるのが難しい領域です。天候や病害虫、市場価格の変動など不確実要素が多く、収量や収益を安定させることは容易ではありません。したがって、農業未経験の企業がいきなり露地栽培に参入し、成功させられる可能性は限りなく低いといえます。
さらに、もし露地栽培から参入した場合には、すでに地域で活躍している農家の競合となる可能性もあります。農業人口が減少している今だからこそ、企業が既存農家と競い合う形で参入するのは、本当に得策なのかを考える必要があります。
一方で、農家と企業の違いを冷静に見れば、農家は長年の経験と土地勘を活かして少しずつリスクを乗り越えてきましたが、企業が強みとするのは「投資力」や「経営リソース」です。つまり、企業が農業参入する場合には、投資によって環境を安定化できる施設園芸を活用し、まずは事業の基盤を固めることが現実的なアプローチとなります。